都市避難に関する研究

 大量の通勤者が朝夕移動を繰り返すなど,ヒト・モノ・カネ・情報の全てが集まる大都市.この集積は日本の経済・産業をリードする大きなメリットであるものの,ひとたび災害が発生すれば集まることによる様々なリスクが同時に顕在化し,その被害は各所へ波及します.特に東日本大震災時に首都圏で発生した帰宅困難者問題は,震度5強という揺れのもとでは「帰れないこと」が問題となりましたが,震度6強・震度7などの強い揺れが発生した場合,また違う問題が顕在化するものと考えられます.これを廣井は「大都市避難問題」と呼んでいますが,このような場合,

  1. 地震直後から周囲の被害や家族安否,移動先の情報などはまったく受け取れず,
  2. どこに行けばよいか分からない大量の人々が行き場所を失い,右往左往するか自宅を目指すなど盲目的な移動を試み,
  3. 各地で大渋滞や混雑現象が発生し,明石花火大会歩道橋事故の再現や群集の大規模火災発生地域への突入,
  4. そして大渋滞に伴って迅速な避難や消火・救急・救助活動が大幅に阻害される
という事態が強く懸念されます(現に東日本大震災の首都圏では上記の1,2が実際に起こっていますが,直接被害が軽微だったため3,4はそこまで大きな問題となりませんでした).

都市における安否確認・避難誘導アプリの開発

 東京大学廣井らは,このような都市災害の特殊性に注目したうえで,災害時の個人の情報収集や避難行動,滞留行動の助けとなる支援システムを開発しています(スマート防災プロジェクト:株式会社AXSEED,株式会社ウェルシステム,MCPC認定SMC防災ネットワーク研究会との共同プロジェクト).そもそも,このような大都市内避難問題については,事前の備えと共に直後の災害情報の伝達が効果的であり,災害用伝言ダイヤルや災害用伝言版,エリアメール,エリアワンセグ,デジタルサイネージ,SNS,ワンセグ放送など様々な手段での解決が望まれます.実際,これらの手段を用いて災害情報提供に関する取り組みを行った事例も多いのですが,廣井らは外出中も使える携帯デバイスの特性を生かしつつ,パケット通信による情報伝達が可能かつ位置情報を把握できるスマートフォンの特徴に注目しました.この代表的な成果物が2012年8月にリリースしたiphone/android無料アプリ「まもるゾウ・防災」です.本システムの主な機能は,

  1. 位置情報付き安否確認機能
  2. 位置情報付き伝言版機能
  3. 避難場所・避難所・災害拠点病院などの検索機能
  4. 避難場所・避難所・災害拠点病院などへの誘導機能
  5. 家族の集合場所記録・共有機能
    (家族の集合場所だけでなく,防火水槽の場所や危ないブロック塀の場所など,様々な位置情報を記録・共有できます)
  6. 災害情報検索機能
  7. 防災Q&A機能
になります.Q&Aをよくご覧になってお使いください.
まもるゾウ防災(android版),2012.08リリース
まもるゾウ防災(iphone版),2013.02リリース

 
iphone版のスクリーンショット(左:メニュー,右:2012年12月7日余震時の伝言板)

 
android版のスクリーンショット(左:安否確認結果,右:避難所・避難場所・災害拠点病院検索)

 

 

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東京大学大学院准教授 廣井悠  Copyright c 2016 U Hiroi. All Rights Reserved